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伊藤ガビンの駄洒落のエディット特別講義

駄洒落愛好家として一部で知られているといえばこの方、伊藤ガビンさん。「すべての応募作に目を通す」―本人たっての希望を受け、異例の特別審査員による全編審査が行われた今回のIT駄洒落コンテスト。はたして、大御所をうならせる駄洒落はあったのでしょうか。そして、ガビンさんを惹きつけてやまぬ駄洒落の魅力とは? 駄洒落について大真面目に語っていただきました。

伊藤ガビン氏

「"駄"の部分だけで生きてきました」

★まずは、ガビンさんと駄洒落の出会いについて教えてください。

―出会いは、僕が最初に働いた職場(*アスキー ログイン編集部)ですね。そこには、ずっと駄洒落を言っているひとたちばかりが集まっていました。編集部だから徹夜とかするじゃないですか。で、徹夜している間、ずっと一晩中駄洒落を言ってるんですよ。するとね、だんだん何を言ってもおかしくなってくるんですよ。トランス状態ですよ。当時の僕は20代前半ですけど、そこで初トランスを体験したんです。音楽とか麻薬とかじゃなくて、駄洒落が初トランス体験だった。ただ、その時の僕はわかってなかったですね。僕は文章書きだから言葉には興味があったんだけど、やっぱりきれいにまとまってるもの、なるほど感のあるものとかが好きだったんですね。だけど駄洒落は、くだらなければくだらないほどいい。"駄"の部分ですね。それに気付いてからは、そのまま何十年と"駄"の部分だけで生きてきてしまった。そういうことですね。

★なるほど。そういわれてみると、ガビンさんの書く文章はある意味"駄"の部分だけが延々と続くような感じですね。あれは意識的なものなのでしょうか。

―ありがとうございます!意識的に。えっと意識的に?それはナンセンスってことですよね。はい。だいたい世の中のおもしろいことっていうのは、特に良い評価を受けたり、なんかの賞をもらったりすることっていうのは、"意味"のほうにひっぱられがちです。最後までナンセンスっていうのはなかなかなくて。でも最後までナンセンスというのは、美しい。美を感じる。だから駄洒落が好きである、と。

★最近のガビンさんのお仕事は割とまじめなものが多いというか、"駄"の部分が少ないような気もしますが...

―そうなんですよ。危機的な状況ですよ。もう咳が止まらないんですよ、まじめなことをしゃべりすぎて。(*この日のガビンさんは風邪をひいていました)

★あまり駄洒落も言えなくなってしまった?

―それはないんですけど、会議なんかでくだらないことをいってると「話が進まないよ」とか怒られるんですよね(笑)。時間がないんだからなんて言われるようになってしまった。余裕がないんじゃないですかね、世の中が。

★駄洒落は余裕の表れであると。そういえば、今回の募集サイトのお写真も余裕というかなんというか、あれは何ですか。

―あれは普段使いの写真ですね。

★普段からああいう写真を撮っていらっしゃるんですか。

―まあ、素振りのようなものですね。駄洒落もそうだけど、普段の素振りが大事なんじゃないかな。

★ただ、万年素振りだけというか、駄洒落って発表の場がないですよね。

―そもそも発表するものじゃないからね。

★今はTwitterなどがあって本当によかったですよね。

―Twitterは大きいですよね。今回も、ハッシュタグつけてpostするだけっていうのがよかった。メールで送るとかフォームで送るとかもあったけど、ちょっと面倒じゃないですか。さらに、はがきで送るとか封書で送るとなったら、おおげさなじゃないですか。おおげさになったら、自分で考えて選んじゃうじゃないですか。Twitterは本当に垂れ流し、流しっぱなしだからね。今回は、排水溝に流れた駄洒落を全部さらってきて宝探しをした感じがよかったと思いますね。

伊藤ガビン氏

低レベルを保ってこそ、駄洒落

★さて、今回5000作以上の駄洒落を読んでいただいたわけですが、いかがでしたでしょうか。(第3回 IT駄洒落コンテストNEO・結果発表はこちらから)

―実は今回ね、大賞や優秀作に選ばれた駄洒落より好きなものがいくつもあるんですよ。それがなんで選ばれていないかというと、他の人とネタがかぶってるんですね。たとえば「Wi-Fiは猫である」とか「Bluetooth、おまえもか」とかね。何人もエントリしてるんで選ばれなかったんですが、そのくらいがちょうどいいのかなって気もするんですよね。コンテストだからユニークな存在を選ばないといけないけど、本来の駄洒落という意味では、かぶっちゃうくらいでいいんじゃないの、という気がしなくもなくて。だからね、このコンテストでもね、選ばれし駄洒落の他にね、かぶっててユニークじゃないんだけどおもしろいっていうね、そういう駄洒落たちの屍をわすれちゃいけない、僕たちは!

★奥が深いですね。他に、なにか課題のようなものは見えてきましたか?

―課題、課題ねえ。そうですねえ、なんていうんですか、もっと今年!って感じのアイテムが入ってくるとよかったかな。

★時流を意識せよ、と?

―たとえば今回「先生、主人は本当にPascalんでしょうか」っていうのと、「被害者はPerlのようなもので殴られ意識不明」っていうのがあって、後者が優秀作に選ばれましたよね。これは、PascalとPerlだったら、なんとなくPerlをとるだろう、みたいなのがあったでしょう。なんとなくですけど。そういうのがおもしろい。だから「天明の大ピピン」とか、すごく好きなんだけど、でもそれは今じゃないよね?いや天明はいいんだけど、ピピンの方ですけど。

★時事ネタを嫌うジャンルがありますが、駄洒落は時事ネタは積極的に取り入れてもよいんですね。

―いいんです。すぐに飽きられて、捨てられていくものですから。だいたい、それでiPadもらおうなんていうのがおかしな話で。なにもらってんだよって(笑)。

伊藤ガビン氏
(選考会の様子。悩むガビンさん)

★ガビンさんの好きな駄洒落の傾向みたいなものはありますか?

―まず、口に出してみておもしろいっていうのがありますよね。頭の中で音として再生したときのおもしろさ。読み方でも変わってくる。「あのねまずFTP(anonymous FTP)」とか。これは普通に文章だけ見てたら選ばれにくいよね。もちろん、今回は文章での応募だから、文章でおもしろいっていうのもあって、「おまえはすでに死んでいる・・・・はべPPPoEぇねわぶ」とか、「いろはにほへと ちりNULLオワタ\(^o^)/」とか、そういうのも好きです。

★一貫して、「きれいにまとまらないほうがいい」というスタンスですよね。

―それはですね、そもそも駄洒落がなんでおもしろいのかっていう話があるじゃないですか。なんでおもしろいかっていうと、ええと、そんな説明するようなもんじゃないんだけど(笑)、まず、ある言葉があって、その言葉の次の語句を予測してそこからピっとずれたときに脳が一瞬困るわけですよ。泣いたり笑ったり困ったり感動したりっていうのは、だいたい脳が困ったときに起こる反応ですよね。この脳を痙攣させる"ずれ"が、駄洒落の場合、「ああ、なるほど」とどこかにつながっちゃいけないんですよ。ずれるけど、どうにもなんない。それが駄洒落の醍醐味だと思います。

★駄洒落は「なるほど感」が少ないほうがいい?

―そうそう。たとえば、「Wi-Fiはネットである」っていう作品がありましたが、あれは「Wi-Fiは」でちょっとずれるんだけど、「ネットである」で持ち直すでしょ(笑)。一方の「Wi-Fiは猫である」は「え!?」っ思ったまま、放置されるんですね。Wi-Fiは猫?猫?どうにも解決しないじゃないですか。そういうもののほうが好みなんですよね。

★いわゆる「洒落」と「駄洒落」の違いですね。

―こういう企業が主催するコンテストなんていうと、ついついきれいな「洒落」が選ばれたりしがちなんだけど、今回はいい感じに「駄」なものたちが受賞しましたよね。そこがすごい。編集部のみなさんは3回目だということもあるのかもしれませんが、そうとうなグルメですよね。

★いや、今回は全体的にレベルが高かったですね。

―だからそのレベルが高いというのはなんなんだと。いったいどこに向かってるレベルなんだと(笑)。駄洒落ってある意味レベルを低いところに保つみたいなところがあるじゃないですか。そういうことで言うと、今回うまく、低いところで保たれているものが選ばれていると思うんですよ。でもその低く保たれているものを「今回はレベル高いよね」とかいって集まって話している状況はおかしいんじゃないかと(笑)。

★レベルが低く保たれていたという点において、非常にレベルが高かった、ということですね。今日は貴重な駄洒落論をお聞かせいただき、ありがとうございました!

―いえいえ、どうもすみませんでした。

伊藤ガビン氏

第3回IT駄洒落(だじゃれ)コンテストNEOはこちら
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