| 第三幕 第六話 『八九団の逆襲』 |
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クロハチの活躍により、"少しだけ"セキュリティへの意識が強まった、電脳の町〜ここは、大江戸。
ドジヒコが小型記憶棒で悪意のからくりを江戸中にばら撒いてしまったため、スケハチとドジヒコはその火消しに奔走していた。
× × × ×
越後屋では──。
スケハチとドジヒコがヒコザエモンと話をしている。
「ドジヒコが、悪意のからくりに感染している小型記憶棒をあちこちで使ってしまったんで、どこから悪意のからくりが入ってくるか判りません。
気をつけてください。」
「ドジヒコ・・・仕事で皆さんに迷惑かけてしまっては、元も子もないでしょう。
もう、便利なよろづやなんておやめなさい!」
「ほんと、申し訳ない。」
「まぁまぁ・・・とりあえずそういうことなので、お客さんたちにも注意してあげてください」
「ええ。判りました。」
× × × ×
その頃、八九団のアジトでは──。
薄暗い中、デッパナが猛烈にキーボードをたたいている。
「あんた・・・昨日から寝ないで何やってんのさ」
「・・・ついに完成しやしたぜ。」
「何が完成したんだい?」
「くっくっく・・・これぞ、八九団謹製!セキュリティ対策からくり!」
「・・・あんた、このあいだ悪意のからくりをばら撒いたと思ったら今度は・・・」
「ウキーウキー!(ただのセキュリティ対策からくりじゃないキー!)」
「くっくっく・・・細工は流々あとは仕上げをご覧じろってね・・・」
「すごい自信だねぇ・・・」
「くっくっく・・・これでがっぽり稼げやすぜ・・・」
× × × ×
その日の夜──。
自室で電算箱の前に座るヒコザエモン。今日も日課のセキュリティ関連の情報収集。
「悪意のからくりが蔓延しているとなると、セキュリティ対策の更なる強化をしないといけませんね・・・」
ヒコザエモンは電算箱を操作していると、何かを発見する。
「おや、これは・・・?」
画面はえどったー。とある人のつぶやきに「極少からくり社の鉄壁セキュリティの最新版が出たようだ。
体験版も用意されているから、試してみたらよいかも。接続先はここ→http://89.gokusho.edo/~」と書いてある。
リンクをクリックして表示された電網頁には、「史上最高の検知率!極少からくり社のセキュリティからくり 鉄壁セキュリティ七」と表示されている。
「『極小』からくり社といえば、基本制御からくりを作っている会社ですね。
なるほど、基本制御からくりの内部まで知り尽くしているから、セキュリティもしっかりできるということですね。
では、早速導入してみましょうか・・・」
ヒコザエモンは、体験版のインストール作業を開始する。
× × × ×
その頃、八九団のアジトでは──。
電算箱に、先ほどヒコザエモンが見ていた「極少からくり社」のセキュリティ対策からくりのサイトの画面が表示されている。
「で、この電網頁はなんだい?」
「『極小からくり社』の『鉄壁セキュリティ』そっくりにつくった、『極少からくり社』の『鉄壁セキュリティ七』でさぁ」
「ふうん・・・で、これでどうやって金を稼ぐんだい?」
「くっくっく・・・電網日記(ブログ)や電網つぶやき(ミニブログ)とかで紹介して、この電網頁に誘導するんでさぁ。
そしたら、よく知らないで見に来た輩はこれを信頼の置ける物と思って、自分の電算箱に導入しちまうってわけでさぁ」
「なるほどねぇ・・・でも、せっかくばら撒いた悪意のからくりをこれで駆除しちまったら、何の意味もなくなっちゃうんじゃないのかい?」
「くっくっく・・・これは、セキュリティ対策からくりじゃねぇんでさぁ・・・」
「どういうことだい?」


この鉄壁セキュリティ七を導入すると、たとえ悪意のからくりに感染していない電算箱でも、瞬時に数十件以上の悪意のからくりを検知します。


まんまとだまされた使用者は、決済札を使って製品版を購入します。

この時、製品版の代金と共に、入力した決済札の情報も一緒にいただけるので、一石二鳥です。
あと、せっかくだから、先日の悪意のからくりも、鉄壁セキュリティ七を導入したときに一緒に導入されるようにしておくんです。
これでまた、いろいろな情報を入手できます。
一粒で二度も三度もおいしい、それがこの鉄壁セキュリティ七なのです。
「・・・というわけでさぁ・・・」
「あんた・・・さすがだねぇ!」
「くっくっく・・・そんなわけで・・・昨日と今日だけで既に100両以上の売り上げ。しかもほら、決済札の情報が既に100件以上も・・・」
「いいねぇいいねぇ!あとは、これをお金に換えるだけだねぇ!」
「ウキーウキーウキー!!(もっと儲けるキー!)」
「くっくっく・・・もう少し決済札情報が集まったら、この情報を売っ払いやしょう。」
「んふふ・・・あたしたちが電網犯罪のカリスマと言われるのも、時間の問題だねぇ・・・」
× × × ×
あくる日──。
スケハチが電算箱に向かっている。
「ドジヒコが悪意のからくりに感染した小型記憶棒を使った所は全部回ったし、あとは個々でしっかり対策してもらえば、感染騒ぎも収まるかな。」
スケハチはキーボードとマウスをかたかたする。
画面にはえどったーの越後屋のつぶやきが表示される。
「お、越後屋さん、こういう時だからって、張り切ってるな?」
その時、携帯電話が鳴る。
「はい、スケハチですが」
「拙者の名はクロハチ。急速に進む江戸のじょ・・・いや、そんなことを言っている場合ではない。
お主、極小からくり社の、鉄壁セキュリティというセキュリティ対策からくりを知っておるな?」
「ええ、知ってますよ」
「そのニセモノで、鉄壁セキュリティ七というモノが出回っておる。」
「ニセモノ・・・ですか?」

賢明な視聴者の方々は、先ほど軽く説明を受けているはずなので、ここでは簡単に解説させていただく。

偽ウイルス対策ソフトを信じて、インターネットからダウンロードし、インストールしたとする。
このとき、同時にウイルスやマルウェア等が一緒にインストールされます。

インストールされた偽ウイルス対策ソフトは、「あなたのパソコンはウイルスに感染しています」と表示する。
このとき、本当にウイルスを検知しているわけではない。
その表示でユーザの不安を掻き立てるのが狙いだ。

ここで、「製品版を購入すると、駆除が可能」というメッセージを出すわけだ。
すると、不安になったユーザは購入用のサイトでクレジットカードの情報を入力し、製品版を購入してしまうのだ。

当然、購入時に入力したクレジットカードの情報は、悪意の輩に詐取されることだろう。

偽ウイルス対策ソフトへの対処法は、「信頼できるメーカーのウイルス対策ソフト以外使わない」だ!
わからない場合は、「パソコンを購入した時にプリインストールされているウイルス対策ソフトの登録を行う」か、「お店に行ってウイルス対策ソフトを買ってくる」か、だ!
「というわけだ。
セキュリティへの関心が高まったことを逆手に取った、非常に巧妙な手口だ。
ニャンクリックが情報の流れを探ってみたところ、尋常じゃない数の人間がこの偽セキュリティ対策からくりを入手しているようだ。
早急に手を打て!」
「・・・わかった。やってみる」
「うむ。任せたぞ。では、さらばっ!」
「江戸中に、悪意のからくり対策をしっかりしてくださいって言って回っちゃったからなぁ・・・とにかく、みんなに偽セキュリティ対策からくりの事、知らせないと。
・・・行くぞ、セキュアマル!」
ところ変わって、ドジヒコの部屋──。
スケハチがやってくる。
「ドジヒコ!いるか!」
「スケハチ~、どうしたんだよ、そんなにあわててぇ」
「ドジヒコ、汚名返上の好機だ!手伝ってくれ!」
× × × ×
そして越後屋──。
スケハチが駆け込むと、ヒコザエモンとコタロウがビックリした表情。
「スケハチさん、そんなにあわててどうしたんですか?」
「はぁ、はぁ、あの、セキュリティ対策からくりの件で・・・」
「ああ、そういえばスケハチさん。
昨日新しいセキュリティ対策からくりを入手しましてねぇ。
私の電算箱を調べてみたら、こんなにがんばってセキュリティ対策を施していたにもかかわらず、100件も見つかったんですよ。感染した文書が。」
「越後屋さん!!それって、極少からくり社の鉄壁セキュリティ"七"ですか?」
「さすが、スケハチさんですね。それですそれ」
「即刻、使用を中止してください。それ、偽セキュリティ対策からくりです!」
「なんですって!?」
× × × ×
ところ変わって、ヒコザエモンの部屋──。
スケハチ、ヒコザエモンが話をしている。
「・・・というわけで、ドジヒコと手分けして、偽セキュリティ対策からくりの事を皆さんにお話して回っているんですよ」
「う〜ん・・・まんまとだまされてしまいました・・・まさか、そんな手口があるとは・・・。
わかりました。うちのものにも知らせて回るように言っておきますよ」
「ありがとうございます」
× × × ×
その日の夕方──。
スケハチ、セキュアマル、ドジヒコが、町人に話しかけ、チラシを配っている。
「・・・というわけなんです。もし知らない人がいたら、教えてあげてください」
「わかった。」
その時、セキュアマルが何かに気づき、唸る。
スケハチはセキュアマルがみている方向を見ると、バナナを持ったデッパナが歩いている。
「あ、あいつ・・・!セキュアマル、あとをつけるぞ!」
「わん!(まかせるわん!)」
× × × ×
しばらくたって──。
とある場所のボロ小屋にデッパナが入っていく。
「あそこがあいつらのアジトか・・・。」
スケハチ、携帯を取り出して電話をかける。
「あ、もしもし。ドジヒコか?頼む。大至急・・・」
× × × ×
「で、町の様子はどうだったんだい?」
「どうやら、あっしらの手口に気づいた連中がいるみたいで、鉄壁セキュリティ七を導入しないように言って回っていやした。」
「そうかい・・・あのスケハチって奴の仕業かねぇ。
まったく、余計なことをしてくれるよ。」
「ま、熱海でひと月ほど豪遊できるくらいは稼げやしたし、そろそろ潮時ですかね」
「じゃ、早いとこ、集めた決済札の情報を売っ払らっちまおうよ」
「くっくっく・・・了解しやした・・・」
電算箱の前に座るデッパナ。
その瞬間、スケハチの声が。
「そうはさせるか!!」
八九団、ビックリして振り返る。
「てめぇはっ!?」
「デッパナ!あんた、つけられたね!?」
「ちっくしょう!・・・もうゆるさねぇぞ!」
「ウキ!ウキー!!(あの犬っ!ここであったが百年目だキー!)」
「江戸のみんなから騙し取ったお金と決済札の情報、返してもらうぞ!」
「あ〜、もう!うるさい!お前なんかをかまっている時間はないんだよっ!」
「バグキチッ!」
バグキチが横にぶら下がっている紐を引っ張る。
すると、スケハチとセキュアマルの上から網が落ちてくる。
「うわっ!」
「ウウ〜ワンワン!(しまった!やられたワン!)」
「くっくっく・・・こんな事もあろうかと・・・」
「ウキーウキー!(ばーかばーか!だ、キー!)」
「んふふ・・・それじゃ、あたしたちはお暇するよ。
じゃあね、色男さん(はあと)」
二人と一匹、出て行く。
× × × ×
そして、アジト、外──。
アネサン、デッパナ、バグキチがアジトから出てくる。
「んふふ・・・あの男、まさかあんなワナに引っかかるとはね。
さ、早いとこ落ち着けるとこに行って決済札の情報を売っ払っちまおうじゃないか。」
「くっくっく・・・そうと決まれば長居は無用、じゃ、はやいとこずらかりやしょう。」
「んふふ・・・たっぷり稼いだんだ。
今夜は高級な宿に泊まろうねぇ」
「ウキーウキー!(高級な宿!たのしみだキー!)」
と、その時突然暗闇に明かりが灯る。
「御用!御用!御用!御用!御用!御用!御用!御用!御用!御用!御用!御用!御用!御用!御用!御用!御用!御用!御用!」
御用の提灯が一味を取り囲む。
暗がりから一人の偉そうな人が出てくる。
「電網盗賊改方、ハセヤマヘイキチである!電網盗賊・八九団!神妙にお縄につけ!」
「えー!?」
岡っ引きにもみくちゃにされる一味。
× × × ×
網からなんとか抜け出して、スケハチとセキュアマルがアジトから出てくると、そこにドジヒコがやってくる。
「ああ、ドジヒコ。なんとか間に合ったみたいだね。」
「スケハチのすがたが見えなかったから、やられちゃったのかと思ったよ〜」
「ははは。なんとか助かったよ。
でも、これで一件落着かな・・・」
そこに、ハセヤマヘイキチが近づいてくる。
「ドジヒコ、スケハチ。手柄であったな。礼を言うぞ」

「は、はい!」
ハセヤマヘイキチが去っていく後姿をでれ〜っとしながら見つめるドジヒコ。
しょっ引かれている一味を見ながら、一安心のスケハチ、セキュアマル。
「スケハチ~、電網盗賊改方ってかっこいいなぁ」
「え・・・あ、ああ、そうだね」
「おいら、決めた!便利屋なよろづやはやめて、岡っ引きになる!」
「えっ?」
「よーし!がんばるぞー!」
「おい、ドジヒコ?」
話を聞かずに、燃え始めるドジヒコ。
「おい!話を聞けよ!」
「次回、『岡っ引きドジヒコ捕物帳』に、ご期待ください!(キリッ)」
「ちがーう!!」
「クゥ〜ン・・・(やれやれだワン・・・)」


