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セキュリティマネジメント

2026.04.08

1歳児との暮らしで気づいた「脅威モデリング」の視点

1歳児との暮らしで気づいた「脅威モデリング」の視点

2025年5月に育休から復帰し、現在は1歳の息子を育てながら、コンサルタントとしてお客さまのセキュリティ戦略策定を支援しています。前回は、子どもの急な発熱対応をきっかけに、家庭におけるBCPの必要性について書きました。今回は、もう少し日常に近いところで感じたことを書いてみたいと思います。

前回の記事はこちら


昨日まで気にしていなかった場所が、急に気になり始めた

息子がハイハイを始めてから、家の中の見え方が変わりました。

それまでは特に気にしていなかったコンセントや棚の下、テーブルの角が、急に気になるようになったのです。少し前までは寝返りをしているだけだったのに、気づけば部屋の端まで移動し、気になるものを見つけると一直線。つかまり立ちを始めてからは、さらに目が離せなくなりました。

大人にとっては見慣れた部屋でも、子どもにとっては違います。
手を伸ばしたくなるものがあり、開けてみたくなる場所があり、登ってみたくなる段差がある。そう考えると、家の中は思っていた以上に「試したくなるもの」にあふれているのだと実感しました。

そんなふうにあちこちを見直していたとき、仕事でやっていることと少し似ているな、と思いました。
何が危ないのかを洗い出して、影響の大きいものから手を打つ。セキュリティの文脈でいえば、脅威モデリングに近い発想です。


育児でも、脅威は外から来るとは限らない

脅威モデリングというと、守るべきシステムや業務に対して、どこに弱点があるか、どんなリスクがあるかを整理する考え方です。

これを育児に当てはめると、守るべきものははっきりしています。
子どもの安全です。

そして、リスクのきっかけになるのは、外部からやってくる何かとは限りません。むしろ、家の中でいちばん積極的に新しい動きをしているのは子ども本人です。もちろん悪気があるわけではありません。ただ、好奇心があって、思いがけない動きをして、昨日できなかったことを今日いきなりやる。その変化の早さが、家庭内のリスクを見えにくくしている気がします。

仕事では、利用者の想定外の操作や、設計時に想定していなかった使われ方が問題になることがあります。育児も少し似ています。大人の目線で「ここは大丈夫」と思っていても、子どもの動きで前提が簡単に崩れることがあります。


家の中を見直してみると、意外と危ないものが多い

家庭内の危険個所

実際に家の中を見ていくと、危ない場所は思ったよりたくさんありました。何となく不安に思っていたことも、書き出してみると整理しやすくなります。

場所 想定されること 発生しやすさ 影響の大きさ 対応
コンセント周辺 手を伸ばす、さわる、指を入れようとする 中 高 カバーをつけて保護する
棚・引き出し 開ける、中身を出す、手を挟む 高 高 ロックをつける、危険物の位置を変える
テーブル周辺 ぶつかる、転んで角に頭を打つ 高 中 角にカバーをつける
家具 つかまり立ち等でぐらつく・倒れる、よじ登る 中 高 固定を見直す、さわれないように囲う
キッチン周辺 熱いもの、刃物、洗剤に近づく 中 高 危険物の位置を変える

こうして並べてみると、「なんとなく危ない」が少し具体的になります。
どこで、何が起こりそうで、先に何をしておくべきかが見えてきます。


すべてを一度に対策するのは難しい

とはいえ、気になるところを全部一気に対策できるかというと、なかなかそうはいきません。育児グッズ売り場に行くと、あれも必要、これもあったほうがよさそう、と際限なく思えてきます。

でも、実際には優先順位をつけるしかありません。

たとえば、多少散らかっていることより、家具が倒れるかもしれない、コンセントにふれるかもしれない、というほうが危険度は高い。ならば、まずはそちらから対処する。全部を完璧に整えるのではなく、まず大きなリスクから減らしていく。その考え方は、仕事でも家庭でもあまり変わらないように思います。

対策自体は小さなことです。カバーを付ける、置き場所を変える、ロックを付ける。ひとつひとつは地味ですが、「何からやるか」が決まるだけでも気持ちはかなり違います。


一度見直しただけでは追いつかない

子どもの成長による家庭内リスクの変化

もうひとつ実感したのは、一度対策したから終わり、ではないということです。

先月までは届かなかった場所に、急に手が届くようになる。
昨日までは登れなかったところに、今日は足をかけている。
「まだそこまではしないだろう」と思っていたことを、あっさりやってしまう。

子どもの成長はうれしい反面、家の中の前提をどんどん変えていきます。安全対策も、それに合わせて見直していかないと追いつきません。昨日までは問題なかった配置が、今日にはもう危ない、ということが普通にあります。

この変化の早さは、育児ならではだと思います。定期的に見直すというより、暮らしの中で気づいたら更新していく感覚に近いかもしれません。


安全対策は、動きを止めるためではなく、安心して動けるようにするためのもの

家の中の危険を減らそうとすると、つい「制限する」方向に意識が向きがちです。さわらせない、行かせない、登らせない。でも本当にやりたいのは、子どもの行動をただ止めることではなく、安心して動ける環境を整えることなのだと思います。

危ないことが起きてから慌てて対応するのではなく、その前に少し考えておく。家のどこに気をつけるべき場所があるのか、何を先に直したほうがよいのかを見ておく。それだけでも、日々の過ごし方は少し変わります。

前回は、子どもの急な発熱対応を通じて、家庭にもBCPの視点が必要だと感じたことを書きました。あのときは、有事にどう動くかという話でした。今回あらためて感じたのは、その手前で「何が起こりうるか」を見ておくことの大切さです。

そして最近は、息子の成長とともに、こちらが対策したつもりでも、また別の動きが出てきて、気を付けるべき点が変わっていくのを実感しています。ふれるかどうかを見ていた時期から、飛ぶ、跳ねる、登るといった動きを前提に少しずつ対策をアップデートしています。

サイバー攻撃の対応でも、攻撃者と守る側の関係はイタチごっこだとよく言われます。ある対策を講じれば、それを回避する新しい手口が出てくる。前提が変われば、こちらの見直しも必要になる。その感覚は、家庭においても似ているように思います。

育児とセキュリティは、一見すると遠いもののようでいて、どちらも「変化し続ける相手や環境に対して、前提を置き直しながら備え続ける」という点では共通しています。仕事で向き合っている"変化を前提に見直す"という姿勢は、家庭の中でも確かに役立っていると感じています。

※本投稿では、生成AIにより生成された画像を使用しています。

具志 香菜子 具志 香菜子

記事の著者

具志 香菜子

シニアコンサルタント。セキュリティ戦略の策定をはじめ、サイバー攻撃対応BCP、サプライチェーンセキュリティ、海外拠点に対するセキュリティガバナンス強化など、企業の持続可能なセキュリティ体制構築を支援。現場に寄り添った実践的なアプローチを重視している。 IPA産業サイバーセキュリティセンターにて、制御システムのハッキング技術を1年間学んだ経験があり、OT領域におけるセキュリティアセスメントにも取り組んできた。 趣味は旅行。ノープランで知らない土地を歩くことで、新たな視点を得たり、リフレッシュしたりする時間を大切にしている。

RISS、Industrial Cyber Security Expert

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