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武田圭史氏に聞く「イノベーションとセキュリティの両立を目指して」(前編)(2/3)

自分たちの身の回りの課題をテクノロジーによって解決することを研究テーマに

★さて、武田先生は現在、慶應義塾大学で教鞭をとってらっしゃいますが、慶應大学で教えることになった経緯を教えてください。

もともと私自身、慶應の大学院出身で、いつかは母校に戻りたいと思っていました。2004年に、日本で情報セキュリティの人材育成を行う機関として米国カーネギーメロン大学日本校の立ち上げをお手伝いしました。その後、大学の国際化を進めていこうという機運が高まっていることもあって、慶應大学からお声がけをいただきまして、海外の大学で教えた経験を日本の大学でも活かせたらと思い、お世話になることにしました。2009年のことです。

★慶應大学での研究テーマ、講義のテーマはどんなものですか?

もともと、私の研究テーマはネットワークの侵入検知なのですね。侵入検知システムは、ネットワークの見張り役ともいうべきもので、ネットワーク上で不正が行われていないかを監視するシステムです。そういう意味では、「見えない脅威を見える化する」というのが一つのキーワードとしてあります。これをセキュリティ以外の分野にも広げていって、情報を利活用することと、セキュリティをいかに両立させていくかというのを研究しています。最近だと、例えば、大学のシステムを学生と一緒に作る取り組みなどを研究の一環として行っています。

★具体的にはどんなものでしょう。

授業の時間割の情報など、大学がPDFで配布していてオープン化されていないようなデータをデータベース化する取り組みなどですね。他には、研究というほどではありませんが、湘南藤沢キャンパスと最寄りの湘南台駅までのバスの時刻表がわかる「SFCバスタイマー」というWebアプリを学生が作ったりもしました。

★学生がアプリ開発をしているのですか。

バスの時刻表を毎日アップデートして、バスの種別や、次のバスが何分後に出るかというのが分かるような内容になっています。こんな風に、自分たちの身の回りの問題を、いかにテクノロジーを使って解決していくかという研究をしています。その中で、どのようにセキュリティを守るか、プライバシーを守るかという問題が出てくるのですね。

情報がデジタル化することで今後もプライバシー保護の新しい問題が起きてくる

★なるほど、イノベーションとセキュリティの両立ですね。さて、プライバシーという意味では、私たちの身の回りでは、モバイル機器の利用の増加や、ネット上のサービス事業者が利用者の行動履歴を収集、活用する事例が増えてきていて、プライバシーをどう守るかということが問題となっています。

難しい問題ですね。プライバシーの問題は、まず、プライバシーの受け取り方が、個人が抱える事情や、人によって違うという問題があります。例えば、ストーカー被害などのトラブルに巻き込まれている人と、メディアに頻繁に顔を出しているような著名人とでは、プライバシーの性質には違いがあります。そういう前提があるにもかかわらず、データの収集、活用を進めたいと考えるサービス提供者側はなかなかそういう意識を持ちにくい側面があります。

★プライバシー保護の基準をどこに合わせるかという基準の問題ですね。

プライバシーを大事にすべきだという人は、一番弱い、センシティブな立場に立ってプライバシーを保護すべきだと考えることが多いように思います。しかし、プライバシーを保護する方向に進みすぎると、極端な話、お互いのコミュニケーションに必要な情報まで秘匿しなければならなくなります。ですから、どこにプライバシー保護の基準を合わせるかには議論の余地があって、非常に難しい問題です。

★社会として、どこまでリスクを受容すべきか、というラインが整備されている段階ということでしょうか。

あらかじめ全てのケースを洗い出して、リスクを想定することは非常に難しいことです。ですから、ある種の試行錯誤を繰り返しながら、最終的には社会がどこまでリスクを受け入れ、どこにメリットを見出すかという合意形成がなされていくのだと思います。プライバシー保護の問題は、基本的には、情報を収集する事業者側が「こういう目的に利用しますがよいですか?」という風に、きちんと事前に承諾をとりそれを守ることが大切です。

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