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弁護士・猪木俊宏氏に聞く「法律実務から見るネットサービスのポイント」(後編)(1/3)

 前編に引き続き、弁護士・猪木俊宏氏にお話をお伺いします。後編では、主に、企業とネットコミュニケーションの問題をリスクマネジメントの観点から語っていただきました。

猪木俊宏氏

猪木俊宏(いぎ・としひろ)
弁護士・猪木法律事務所、
サイバーボンド(株)代表取締役など。

1998年、弁護士登録(第二東京弁護士会)、三井安田法律事務所に入所。2004年、三井法律事務所設立に参画し、2011年7月にITスタートアップ(※)ベンチャーに特化した法律事務所として猪木法律事務所を設立。弁護士として企業法務等に携わる一方、起業から資金調達、資本政策など、スタートアップが直面する課題に対して起業支援を行っている。
(※)スタートアップとは、起業することの意。スタートアップ企業とは、起業したばかりの企業を指す。

ソーシャルメディア運用のガイドライン策定と、担当者の裁量に任せる仕組みづくりが大切

★企業とネットコミュニケーションについて、リスクマネジメントの観点からお話を聞かせ下さい。

 リスクマネジメントとして大事なことは、一言でいえば、炎上しないように未然に対策することですね。ご存じの通り、「炎上」によりブランドイメージを損なうことのリスクは大きいわけですが、実際のところ、炎上を未然に防ぐ対策として一番良いのは、顔と名前を出して発信している担当者がいて、その人が直接対応していくことではないかと感じています。もちろん、企業がソーシャルメディアのアカウントを運営する以上、正確性も大事です。ただ、正確性を求めるあまり、スピード感が失われてはいけません。そう考えると、企業がソーシャルメディアを運営するにあたり、担当者のリテラシーというのがカギを握ってきます。

★ある程度、担当者の裁量にゆだねる方がうまくいくということでしょうか。

 そうですね。堅苦しいことばかり書かれても、ユーザーとしては面白味がありません。ある程度、自分のキャラクターというか「色」を出して、肩肘張らずに普通にコミュニケーションをとっていく方がいいと思います。最近では、企業アカウントもずいぶんと柔らかくなってきて、うまくやっているなあと感じます。もちろん、よかれと思って発言していく中で、例えば、失言というか、調子に乗りすぎたということもあると思います。大事なことは、許容できる範囲内で、失言をおそれずに積極的に取り組んでいくことです。

★リスクを避けるために不必要な発言をしないという点と、お客さんとコミュニケーションを取るために積極的に発言するという点と、バランスをとるのが難しいですね。

 ソーシャルメディアを運営する以上、ある程度積極的にやっていくしかないところがあって、発言の内容によっては、炎上までいかないまでも多少のクレームは出てくるかも知れません。それはもう、そういうものだと気をつけて運営していくしかない面はあります。もちろん、社会通念上、許されない発言というのはありますので、最低限、守るべきガイドラインというものは必要です。

★きちんとソーシャルメディアを運用するためのガイドラインを決めることが大事なのですね。

 はい。ガイドラインの範囲内であれば、距離感、トーンなどのスタイルは担当者の自由に委ねるのが良いと思います。私は、自分の扱っている仕事についてのツイートは一切しないと決めていますが、弁護士の中には、特定されない範囲で「今こういう事件の書類を書いている」などとつぶやいている先生もいます。そのあたりのさじ加減というのは、やはり運営する人の考え方によって違うなあと思います。

★アカウントと繋がるユーザーがある程度増えてくると、当然ながらネガティブな反応というのも増えてくると思いますが、そのあたりはどう考えたらよいでしょう。

 言い方が適切かどうかわかりませんが、特にネガティブな反応については「相手にしない」ことも大事だと思います。都合のいいコメントやリプライにばかりに反応しているというのは不誠実ではないかと心配される向きもありますが、Twitterなどでは、わざわざネガティブな発言をするためのアカウントを用意して煽る人もいますので、そういう声にまで一つ一つ反応しても仕方がない面はあります。

★では、万が一、炎上してしまって、沈静化するためにはどういうことが必要でしょうか。

 どうして炎上しているかという原因をきちんと特定して、早めに対応することです。例えば、利用規約の内容で炎上したということであれば、規約の変更について問題ないかどうかを見極め、サービスに致命的な問題がないようならすぐに改訂することが大切です。そして、規約改定の意図はこうで、こういう理由で改訂しましたという経緯を簡潔に説明します。スピード感をもって、経過をガラス張りにし、対応に嘘がないということが大切です。

★説明するプロセスの中で、個別の意見などには対応した方がいいのでしょうか。

 いいえ。そこは個別に対応していると単なる「燃料投下」になってしまう場合があるので、本質的な対策を迅速に示して、きちんと説明してあとは余計なことは言わないという対応がよいと思いますね。よほど甚大な被害が出て影響が広範囲に及んだというのでない限り、対応が誠実であればやがて沈静化していくと思います。

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